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結  言



 オルト水素(o-H2)とパラ水素(p-H2)の低温における吸着性の差は、吸着された分子の回転が束縛されることによるエネルギーの変化に基づく。その束縛回転の主な要因が何であるかを明らかにすることを目的に、ナトリウムモルデナイトによる水素収着に関して、収着熱と収着分離係数の2つの面から検討した。
 収着に寄与する各種エネルギーを理論的に計算した結果、水素分子の配向に最も大きく影響するのは静電場の勾配と四重極子の相互作用であることが明らかになった。この相互作用により、水素分子はモルデナイト細孔中でナトリウムイオンに対して水平に配向していると結論された。
 収着熱の実測値は、種々のエネルギーの総和として理論的に求められる値よりも小さい。これは、水素分子がモルデナイト細孔中を一次元的に運動しているためであることがエントロピーの値からも示された。そこで運動による収着熱の減少を表す係数として空間因子を定義し、実測値と理論値の比からその値を求めた。
 o-H2とp-H2の収着力の差を示す収着分離係数は、それぞれのエネルギー準位の縮重度とエネルギー値とから計算できる。先に収着熱から求めた空間因子を用いて計算値を補正すると実測値とよく一致し、水素分子の配向モデルと空間因子の値が妥当なものであることが確認できた。



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