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緒  言



 アモルファスシリコン(a-Si)は、結晶シリコンと比較して容易に、迅速に作製できる。また大面積化がしやすく、可視光の吸光度が非常に高い、といった様々な特徴を備えており、光起電素子用として有望な材料である。しかし禁制帯内に存在する多くの局在準位のため価電子制御ができず、以前はあまり顧みられなかった。ところが、1975年に、Spearらによってシランのグロー放電分解で作製したa-Siは局在準位密度が非常に低い、ということが見出されて以来1)、各地で活発に基礎的な研究が行なわれている2-12)。しかし、a-Siを光電気化学セルの電極として用いるという研究はあまり行なわれておらず6,10),11)、特に水溶液中での挙動に関するデータは少ない6)。一方、他の半導体、例えば結晶Si、Ge、GaAs、CdSなどを用いた光電気化学セルに関する研究は盛んに行なわれているが13-24)、この場合でも、水溶液中での実験はあまり多くはない15),19)。その理由の一つとして、酸化物半導体以外の半導体では、水との反応による表面の酸化や、それに伴う機能の低下が著しい、ということが挙げられる17-19)。しかし水というのは最も一般的な溶媒であり、水中で起こっていることを解明することは重要なことである。
 この論文ではシランのグロー放電分解によって作製したa-Siを、水溶液中で電極として用いた場合の挙動について報告する。エッチングしたa-Siを水溶液中に浸した場合や光照射を行なった場合の表面酸化膜の形成や、それに伴う表面準位の生成を、電気化学的な手法で調べた。また、a-Si電極に印加した電位や水溶液のpHが、a-Siの表面状態に与える影響についても述べる。



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